【インタビュー】樹木係 補佐/樹木医 中井貞さん
2026/04/21
ーはじめに、中井さんの経歴を伺えますか?
もともとは造園コンサルタントとして、緑地の設計に携わっていました。京都の社寺庭園の修復や設計にも多く関わり、桂離宮の庭園では、抜本的な復元プロジェクトの一環として約3万本の植物を調査しました。より 深く植物を理解するために樹木医の資格を取得し、2010年から京都府立植物園で勤務しています。
ー京都府立植物園はどんな所か教えてください。
約1万2000種類、12万本の植物を育てる、日本最古の公立植物園です。技術系職員30名、総務10名に加え、入園門や売店などの管理を委託している植物園協力会やボランティアの方々約140名が関わり、日々の運営を支えています。

ー京都府立植物園の一番の醍醐味は、どのようなところでしょう?
1924年創立の歴史を持ち、2024年には100周年を迎えました。これを記念して、樹齢100年を超える「ヘリテージツリー」に案内板を設置しました。園内には、日本初導入の樹木も多く、訪れる方にはぜひそれぞれの木が過ごしてきた時間に思いを馳せていただきたいです。
特に桜は約180品種・約500本を誇り、2024年には日本植物園協会の指定する「ナショナルコレクション」に認定されました。紅葉も世界各地のカエデ属を集めており、メタセコイヤやフウなど、世界の紅葉を楽しめます。
私は樹木医として、樹木の成長を短期(5年)、中期(10年)、長期(50〜100年)で見据えています。重要なのは、一本一本の樹木が根を張る空間の管理。目に見えない土の中の関係性を考慮しながら、植栽を行っています。

ーこれまでで、一番大変だったことはなんですか?
2017年と2018年、2年連続で大型台風により300本以上の樹木が被害を受けました。中には樹齢100年以上の木もあり、倒木の処理に年末までかかりました。失われた木を補うため、関東を中心に数百本の樹木を探し、導入しました。
ー近年の、新たな試みなどはありますか?
2024年には「どんぐりの森」を整備しました。コナラやクヌギなどの木々に加え、台風で倒れた丸太をそのまま並べています。子どもたちに人気のエリアで、どんぐりを拾ったり、倒木を渡ったり、落ち葉の上を歩いたりと、五感で植物を感じることができます。
樹齢100年の木が朽ちていく様子も見られるこの場所は、木が語りかけてくるような体験ができる特別な空間です。都市化が進む社会の中で、こうした肌感覚で植物と触れ合う経験は非常に重要だと考えています。
ーこれからの100年に向けて、中井さんが期待する植物園の未来について教えてください。
京都府立植物園は、大正期に時代を反映した新たな緑地空間として誕生しました。日本の庭園緑地の歴史は、奈良時代以降、仏教思想を体現する場として発展してきましたが、この植物園は公共性と和洋折衷を体現した新しい造園のかたちです。
今後は、大正から昭和初期の造園事例としてより評価され、京都の文化財として位置づけられることを願っています。植物園が持つ歴史的価値と未来への可能性を、より多くの人に知っていただきたいです。


※この記事は、2025年9月に広報の一環として開催した「メディアクリエイター講座」にご参加の皆様が作成してくださいました。